ふくろう通信

平成23年 12月 5日
米山 昌英

(つまづ) いた石は自分の踏み石になる

小田急電鉄SC事業部主催のオーナー研修会に参加してシンガポールに出かけた。雨季にも拘わらず天気にも恵まれ大変有意義な研修会となった。
閉塞感が一杯の日本を後にして、シンガポールを見ると何もかもが新鮮に見えて来る。
街のきれいな姿にまず驚かされる。ゴミ一つ落ちていない街並みを見て、為政者の並々ならぬ努力と決意に驚かされる。勿論タバコやガムを捨てることは、直ぐに罰金に繋 (つな) がるという。タバコとガムは入国の時にも頗るうるさい。

シンガポールはさまざまな民族が暮らす多民族国家である。日本のように単一民族国家ではない。従って言葉もマレー語、英語、中国語、タミール語と多言語の国である。主にマレー語、英語が必修言語であるという。
国の総面積は東京都の1/3の広さで、淡路島を想像すればよいという。この狭い面積に人口凡そ507万人(2010年の数字)が住んでいるという。
他民族が狭い土地に一緒に生活するシンガポールは、民族間の摩擦というものは無いのだろうか。実に整然とした印象を受けるのだが、細かいことは、にわか旅行者には判らない。きっと昔はトラブルも多かったのではないかと思うのだが、現在はしっかりした政治に支えられて生活者がそれに従っているという印象を強く持つた。アメと鞭を上手に取り入れて大都市が営まれている感じである。

シンガポールは、スリランカと同様に水が不足する国であり、隣国のタイから50年間の水利権を借りて水を確保しているということである。最近また50年の契約を更新したばかりである。日本のように「安全と水はタダ」という感覚はこの国では通用しない。為政者は次の50年先を見て、自国で水の供給が出来る体勢を着々と準備して次の契約更新はしないということである。

車の多いのにも驚かされた。朝夕の車の混雑は、東京と同じような感覚であるが、走る車は悉 (ことごと) くきれいである。ベンツを初め、外国車は全て運転席が右側に統一されている。いたるところにあるERPといわれる日本のETCにあたる高速道路の自動料金収受システムには更に驚かされた。
日本のように狭いゲートを通ってチェックするというのではなく、普通に走りながらまったく違和感を感じさせることなく、ITによる料金徴収が、自動的になされているということである。先を見越して早い段階から「ITによる交通システム」のソフト開発に多額の投資をして来た結果である。現在はそのシステムを他国に売り出して外貨を稼いでいるというのである。狭い国土を快適にする術 (すべ) を知る先見の明には、誠に頭が下がる。
車の取得にも規制を設けている。車を欲しい人は、まず申込みをして多額のお金を支払い許可をもらってからでないと車が買えない。また、ディーラーは販売の時には、ERPの自動収受システムを読み取る器械を設置しないと車を売ることが出来ない。従って一台の車の価格が700万円くらいになるというのである。車の価格を高くすることで、買い難 (にく) くして車の量を規制しているのだという。従って、シンガポールでは車はステータスである。

シンガポールの最近の変貌振りには実に驚かされる。ハードである大型のショッピングセンターを創り、そこにカジノをはじめ様々なソフトを投入して観光客を誘致する。
2010年に開業した超大型ショッピングモール「マリナ・ベイ・サンズ」や巨大リゾートアイランド「セントーサ島」などはその奇抜な外観とともに見る物を圧倒する。
2012年に開業を控えた世界の珍しい植物だけを一同に集めた大型施設も建設中である。ただ単に大型の施設を作るだけでなく、観光客を充分に満足させるソフトを開発してお客様を飽きさせない。誠に官民一体の大事業が、其処彼処 (そこかしこ) で行なわれているのである。

個人的には今年の9月に、スリランカ、シンガポールに出かけたとき、どうしても見ることが出来なかったコーヒー店を今回は見学することが出来た。街中に40店くらい展開しているというシンガポールでは超有名店である。
早朝のトーストセットが食べたくて、一人で朝早くタクシーを飛ばした。お蔭で沢山のヒントを頂くことが出来た。これからの当社の店の運営にも大きな示唆を与えてくれるはずである。

今は亡き大宅荘一氏の説によると人生で大切なことが三つあるという。
「一つは人に会うこと、二つ目は旅に出ること、三つめは少し本を読む。」ことだという。
この三番目のすこし本を読むというのが、大宅先生らしい言葉だと思うが、旅に出るということは、人生で実に大切なことである。感受性の強い若いうちは、尚更である。つまずいた石は自分の踏み石になるのだ。旅に出て様々な体験をして、自らの自立心を養っていく。
国を愛する気持ちは、旅に出て他国から日本を眺めた時にはじめて確立される。自らの国に愛国の情が持てずに、他国を愛することが出来る訳がない。何歳になっても旅で得られるものはとてつもなく大きい。
旅は様々な感性を磨いてくれる宝物である。 

合掌




米山 昌英